院長ブログ一覧

ネアンデルタール人の食事

考古学の進歩はすごいですね、今回の話題はネアンデルタール人が食べていたものです。ネアンデルタール人は約20万年間に現れ、4〜3万年前に絶滅した旧人です。現人類とも交流があります。

ベルギーのスピ洞窟(北緯50度)に住んでいたネアンデルタール人(〜36,000年前)は、植物性が20%、動物性が80%の食事を摂っていました。この食性は骨コラーゲンの同位元素研究から推定されましたが、歯石に残されていたDNA研究からも裏付けされました。彼らは主に肉類を食べ、毛深犀(氷河期を代表する大型動物)や野生のヒツジを好んでいたようです(Nature 2017)。

一方でスペインのエルシドロン洞窟(北緯43度)のネアンデルタール人(〜49,000年前)は主に野菜やでんぷんを摂っていました。歯石のガスクロマトグラフィー質量分析で肉類からの脂肪や蛋白はほとんど検出されず、種々のアルキルフェノール、芳香族炭水化物、焦げたでんぷん顆粒などが検出され、煙っぽいところにいて調理した野菜を食べていたようです。歯石DNA分析からも肉類は検出されず、キノコ、松の実、コケ類が検出され、この結果からも森林で採集生活をしていたと考えられます。

住んでいる所の環境によって食べるものが大きく違いますね。狩猟採集民族では「狩猟は高緯度地域でのみ主要な生存手段であり、採集が主な生存戦略である(Man the Hunter 1968)」と言われます。ネアンデルタール人でも同じだったでしょうか。


平成30年3月8日

GLP-1製剤の飲み薬が開発中です

糖尿病薬の一つにGLP-1製剤があります。バイエッタ、リキスミア 、ビクトーザ、ビデュリオン、トルリシティが代表的な薬です。インクレチン作用を高めるという点でDPP-4阻害薬と共通しますが、DPP-4阻害薬より効果が強いお薬です。残念なことにDPP-4阻害薬と違って注射薬しかありません。

現在、GLP-1製剤の飲み薬の開発が進められています。以前にセマグルチド注射薬(ノボ社:日本未発売)を紹介しましたが、この薬を飲み薬にした治験が第3相まで進行しています。今年に発表が予定されていて、うまく進めば2020年に発売予定です。

服用してから30分は食事が摂れないこと、吐き気をおこす可能性なども言われていますが、DPP-4阻害薬を上回る効果が期待されています。


注)DPP-4阻害薬はジャヌビア、グラクティブ、エクア、ネシーナ、トラゼンタ、テネリア、スイニー、オングリザ、それにザファテック、マリゼブなどです。

注)第3相治験は、その薬を使うであろう患者を対象に、有効性、安全性の検討を主な目的にして、それまでの治験より大きな規模で行われます。第3相治験が無事通過できれば、承認に向けた手続きが行われます。


平成30年2月23日

インフルエンザは心筋梗塞の引き金になる

呼吸器系の病気が急性心筋梗塞の引き金になることがあります。インフルエンザにかかった時の心筋梗塞リスクについて論文が出ましたので紹介します(NEJM 2018)。

こういった研究ではインフルエンザ感染が正確に診断されているかが問題になりますが、今回の研究ではオンタリオ公衆衛生検査室、大学病院検査室でインフルエンザ感染を確認していて、精度の高い診断です。

上記検査室に呼吸器系ウィルス検査が提出された277,982検体のうち、148,307検体にインフルエンザ検査が行われ、19,729検体がインフルエンザ陽性でした。2W内にも検査が提出されてインフルエンザ陽性だった684検体を除き、また提出の前後各1年(2年間:下記のリスク期間とコントロール期間)に心筋梗塞を起こさなかった18,546検体を除いた499検体提出者で分析が行われました。

インフルエンザが検出された日を起点として、7日間をリスク期間とし、その7日間を除く前後各1年(2年間)をコントロール期間としました。

インフルエンザにかかって7日以内の心筋梗塞リスクは、6.05(3.86-9.50)と大きく増えていました。ウィルス別に細かくみると、インフルエンザBで10.11(4.37-23.38)、インフルエンザAで5.17(3.02-8.84)、RSウィルスで3.51(1.11-11.12)、その他のウィルスで2.77(1.23-6.24)でした。なお年齢別にみると、65歳以上で心筋梗塞が増えていました(若い成人では増えませんでした)。インフルエンザBのほうがインフルエンザAより悪い成績に見えますが、検出力の問題があってそうとは言えないそうです。


平成30年2月15日

減量した脂肪はどこへ行く?

Q:減量した脂肪はどこへ行くでしょう?

あまり考えたことのない質問ですね。
一番多い回答は「エネルギーとして使ってしまう」かもしれません。しかし質量がエネルギーに転換される(E=mc2)と莫大なエネルギーが産生されます(原子爆弾など)。もちろんそんなことはありません。

ヒト脂肪組織の中性脂肪の平均的な組成はC55H104O6です。
C55H104O6が代謝されますと、
  C55H104O6 + 78O2 → 55CO2 + 52H2O

従って10kgの中性脂肪は代謝されると、29kgの酸素と結びついて 19.6kgの二酸化炭素と9.4kgの水になります(BMJ 2014)。

肺から取り込んだ酸素を除いて計算しますと、10kgの中性脂肪は8.4kgが二酸化炭素(肺から出ていく:84%)、1.6kgが水(主に尿に出ていく:16%)に変わります。正解は「主に肺から出ていく」です。

A: 主に肺から出ていく


平成30年1月17日


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