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高脂肪食で腸内細菌が脳へ移行

高脂肪食を食べたマウスでは腸バリアが破綻し、細菌が腸から脳へ移行することが発見されました。移行する細菌量は少ないのですが、何等かの病気の原因になるかもしれません。研究したのは米国エモリー大学の人たち、研究がまとまるのに7年かかりました(PLOS Biology 2026)。

マウスに動脈硬化を引き起こす高脂肪食(ペイゲン食:高脂肪高コレステロール飼料)を投与しますと、腸内細菌叢が変化し、腸のバリア機能が破綻して腸管透過性が亢進します。

研究者たちはまず、腸内細菌叢の変化を確認しました(ブドウ球菌、バクテロイデス、アッケルマンシアなどが増加し、腸内常在乳酸菌が減少)。次に腸バリアが破綻して腸管外に細菌が漏出していないか、回腸、肺、心臓、腎臓、脾臓、脳、血液などで細菌を調べました。ほとんどの臓器に細菌はいませんでしたが、びっくりしたことに脳に少数の細菌が検出されました。髄膜や脳脊髄液で検出されないことから、脳脊髄膜炎を起こしたのではありません。検出された細菌はブドウ球菌属、腸球菌で糞便や回腸に存在する細菌でした。

細菌はどこを通って腸から脳に移行したのでしょうか。普通考えられる途中の臓器には細菌がいませんでした。研究者たちが注目したのは、脳と腸をつないでいる迷走神経でした。迷走神経の頚枝を分析しますと、少数の細菌(ブドウ球菌を含む)が検出されました。また右頚部で迷走神経を切断すると脳内細菌が1/20(Mdr-/-マウス)、1/3-4(B6マウス)に減少しました。このことから、腸内細菌が迷走神経を通って脳に移行したと考えられました。

抗生剤カクテル(バンコマイシン、アンピシリン、ネオ邁進、メトロニダゾール)を飲料水に混ぜ、マウスの腸内細菌叢を攪乱させました:ブドウ球菌属が減少し、ペニバチルスが増加しました。すると、脳内でもブドウ球菌属が少なくなり、ペニバチルスが増加しました。腸内細菌叢の変化と脳に見つかる細菌の種類が一致しました。

高脂肪食を与えてから脳に細菌が見つかるまでの時間経過を検討しました。2日以降に迷走神経に細菌が現れはじめ、6日以降に脳に細菌が検出されました。この時間順序は、迷走神経を経由して脳に移行するという仮説と矛盾しません。

無菌マウス(細菌がいないマウス)に単一の細菌:エンテロバクター菌(Enterobacter cloacae)を定着させて実験しました。この場合でも、高脂肪食を投与したマウスにのみ脳と迷走神経にエンテロバクター菌が検出されました。

マウスにDNAバーコードのついたエンテロバクター菌を定着させ、脳内の細菌DNAをPCAで検討しました。通常食では陰性でしたが、高脂肪食マウスの脳内でこのDNAバーコードが検出されました。外から与えた細菌のDNAが脳で検出されたことから、細菌は自然発生的な由来でなく、人為的に定着させた細菌に由来することが示されました。

腸バリア破綻の可逆性について検討しました。高脂肪食を投与していたマウスを14日間通常の餌に戻したところ、腸の透過性が改善され、脳内の細菌数が減少しました

アルツハイマー病、パーキンソン病、自閉症スペクトラムのモデルマウスで脳内細菌を検討しました。これらの疾病モデルマウスでは、食事介入なしで脳および迷走神経に少量の細菌が検出されました。これらの細菌はそれぞれのマウスの糞便あるいは回腸から常に検出されました。全身組織または血液からは細菌が検出されず、血液脳関門透過性指数も上昇していませんでした。

以上をまとめますと、高脂肪食で腸管透過性が亢進し、迷走神経を通って少数の細菌が腸から脳へ移動するようです。脳に移行した細菌がアルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの病気の発症と結びついているか、今後の検討が必要です。



令和8年6月18日

ペイゲン食:高脂肪高コレステロール飼料(1.25% コレステロール添加、コール酸添加、35kcal% 脂肪含有量 ココアバター・ココナツオイル使用)

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