GLP1(+GIP)受容体作動薬と筋肉
GLP1受容体作動薬、GLP1+GIP受容体作動薬は体重を大きく減らします。このときに筋肉も大きく減ってしまわないか心配になりますが、それほど心配しなくてよさそうです。セマグルチド(ウゴービ:GLP1受容体作動薬)とチルゼパチド(マンジャロ:GLP1+GIP受容体作動薬)の成績を紹介します。
はじめにセマグルチドの成績を紹介します(Diabetes Obes Metab 2025)。糖尿病患者で使われる場合はオゼンピックという商品名で1mgまでしか使えませんが、肥満に使われる場合はウゴービという名前で2.4mgまで使えます。この研究ではセマグルチド2.4mgを使っています。
106名(平均BMI 46.3kg/m2)の分析です。体重は12ヶ月で13%減少しました。総脂肪量は7ヶ月で10%、12ヶ月で18%減少しました。除脂肪体重は7ヶ月で3kg減少しましたが、それ以降は一定でした。除脂肪体重は筋肉・骨・内臓・水分などの総量を指します。〜50%が筋肉ですので、おもに筋肉量の指標になります。握力は12か月後で4.5kg増加していました。また、サルコペニア肥満(筋肉が減少している肥満)は12か月後で49%から33%に減少しました。除脂肪体重で補正した安静時エネルギー支出は7ヶ月後から12か月後にかけて増加しました。
セマグルチドで減量した場合、減り続けるのは脂肪のようです。筋肉の減少は少なく、握力はむしろ増加していました。
次にチルゼパチド(マンジャロ)の成績を紹介します(Lancet Diabetes Endocrinol 2025)。この研究では肥満(+過体重)のある2型糖尿病患者が対象で5、10、15mgを使いました。3割の人がSGLT2阻害薬を併用しています。
246名(平均BMI 33.4kg/m2、平均HbA1c8.3%)の分析です。MRI検査を行い、筋肉内脂肪浸潤、筋肉容積、筋肉容積のZスコア(性、BMIをそろえた人の平均筋肉容積と比べた場合の偏り具合)をみています。デグルデクインスリン使用群を対照にしています。
チルゼパチド群を合算しますと、試験開始後52週で筋肉内脂肪浸潤、筋肉容積、筋肉容積のZスコアはそれぞれ、-0.36%point、-0.64L、-0.22 と減少しました。デグルデクインスリン使用群では体重と筋肉容積が増加し、他の変数は変わりませんでした。集団に基づく推定変化と比べると、チルゼパチド群の筋肉容積は同様(つまり体重変化に伴う自然変化程度の減少しか認めなかった、-0.04)でしたが、筋肉内脂肪浸潤(-0.42%point)が大きく減少していました。筋肉容積のZスコアはチルゼパチド15mg使用群でのみ減少しました(-0.18)。
チルゼパチドは筋肉容積を減少させますが、その減少は体重減少に見合う適応範囲内であり、体重減少に見合う以上に筋肉内脂肪浸潤が減少するという好ましい結果をもたらしたと結論しています。
GLP1受容体作動薬、GLP1+GIP受容体作動薬で体重が減少しても筋肉には悪影響がなさそうです。
令和7年12月24日
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