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糖尿病の歴史27 19世紀頃の糖尿病

時代は200年ほど飛びます。19世紀頃の医学〜糖尿病はどのようだったでしょうか。

19世紀初頭から病理学が発展します。病理学は病気で亡くなった人を解剖して病気の原因を探りますが、 病理学では糖尿病の原因はわかりませんでした(当時は肉眼での観察です)。19世紀半ばに細菌学が勃興します。「糖尿病の原因は感染」と考えた人がいましたが、間違いでした。

生理学に新たな発見がありました。これまで「糖は植物由来、動物は糖を作ることができない。血液中の糖は食後のみ、あるいは糖尿病のような病的状態でしか認められない」と考えられていましたが、動物も糖を作ることが分かってきました

クロード ベルナール(1813-78)は (1) 飢餓状態でも動物の血液中に糖が存在し、(2) 肝静脈の血糖は門脈よりもっと高濃度であることにびっくりします。血液は、消化管→門脈→肝臓→肝静脈の順に流れます。肝静脈血の方が門脈血よりブドウ糖が濃いということは、肝臓が糖を分泌していることに他なりません。そして肝臓にグリコーゲン(分解するとブドウ糖になる)が存在することを発見します。

当時、糖尿病は不安定な精神、過剰な情欲と関連して発症すると考えられていました。糖尿病は頭脳労働者に多い。人ほど複雑な心を持たない動物は糖尿病が少ない。ベルナールは大脳第4脳室を刺激すると肝の糖産生が増加することを発見しました。そして「糖尿病は頭の病気」と結論します。

ベルナールは膵液の消化作用を発見した人としても有名です。


平成27年10月2日
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