ランタスのバイオ後続品
ランタスは持効型のインスリン製剤(グラルギンインスリン)で、基礎インスリン分泌を補充するのに使われます。Eli Lilly(イーライリリー)社は1923年からインスリンを作っていて、インスリンに関するトップ企業です。
「バイオ後続品(biosimilar)」という言葉はなじみが少ないかもしれません。「ジェネリック医薬品(後発品、後続品)」と似ていますが、まったく同じでないので簡単に説明します。
ジェネリック医薬品は小分子の化合物で、構造的にまったく同一の分子を含 みます。これに対してバイオ後続品は蛋白質などのように大きな分子で複雑です。生きた細胞に医薬品の構造遺伝子を組み込んで作りますが、同じ遺伝子情報を 導入しても作られてくるものが微妙に異なります。そのためジェネリック品と異なる取り扱いをします。料理にたとえると、同じレシピーで作っても、環境に よって味が違うようなものです。
インスリンは結構高価ですので、信頼できる企業がバイオ後続品を出すことは歓迎です。日本ではいつになるでしょうか?
平成26年7月4日
吸入インスリンが米国で認可
最も多い有害反応は、低血糖(これは主作用です)、咳、咽頭痛、咽頭違和感です。喘息や閉塞性肺疾患の人では気管支痙攣をおこす可能性があり、警告がついています。注射の嫌いな方には朗報かもしれません。(最初の吸入インスリンはExuberaですが、コストが高く販売中止になっています)
平成26年7月2日
糖尿病大血管障害、腎障害の動向
大血管障害は動脈硬化に基づく障害で脳・心臓・末梢動脈疾患を指します。最小血管障害(眼・腎・神経の障害)と対比して、この言葉が使われます。
細かく見て行きますと、この20年で急性心筋梗塞が起こる相対リスクが 3.8→1.8、脳卒中が起こる相対リスクが 3.1→1.5、下肢切断が起こる相対リスクが 18.8→10.5、末期腎障害が起こる相対リスクが 13.7→6.1 に減少しています。(この数字は糖尿病の人が糖尿病のない人に比べてどれだけ疾患が多いかを示す数字です)
糖尿病のある人の急性心筋梗塞、脳卒中の発症率は、20年間でそれぞれ67.8%、52.7%も減っています。糖尿病のない人の発症率低下がそれぞれ31.2%、5.5%減少ですから、糖尿病のある人の発症率が大きく減少していることがわかります(米国では糖尿病のある人の急性心筋梗塞、脳卒中の発症率はほぼ同じで、年齢調整後人口1万人あたり、それぞれ45.5、52.9人です(2010年))。
大血管障害、腎障害のリスク低下は糖尿病の管理が良くなったこと、合併症の危険因子の管理が進んだことが挙げられます。日本においても、どうぞ、しっかり管理していきましょう。
平成26年5月30日
コーヒー消費量の変化と糖尿病発症

対象は、女性がNurses Health Studyの 48,464人(1986-2006)と47,510人(1991-2007)、男性がMale Professionals Follow-up Studyの27,759人(1986-2006)です。4年ごとに食品調査をしていて、今回はコーヒー消費量の変化に着目して分析しています。エンドポイントは2型糖尿病の発症で、2年毎に質問票を回収しています。
習慣として1日1杯以上コーヒー消費量が増えた人は糖尿病発症リスクが11%減り、1日1杯以上コーヒー消費量が減った人は同リスクが17%増えました。最初のコーヒー消費量が多い人も少ない人も、同じ結果でした。
コーヒー好きの方には朗報ですが、一方で55歳以下の人では週に28杯以上コーヒーを飲む人で全死亡が増えるという報告(Mayo Clin Proc2013)もあります。1日3杯くらいまでが適当かもしれません。
平成26年5月20日